【あの人は蜘蛛を潰せない】

動機

新潮文庫の100冊 2018年版を読む。
4冊目

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すすめる?

余りにも古い文学は語り口が難しすぎたり、古すぎたりして読みにくい。
とっかかりとしては、この本くらいが私には調度よい。

劇的な何かを望んでいるのではなく、人間模様を読みたいならば、とても良い本に感じる。

内容

梨枝は28歳の独身女性。店長を務めるドラッグストアでバイト大学生の三葉と恋に落ちた。
梨枝は三葉に、自分にない逞しさを見た。その逞しさに惹かれると同時に、自分に対する「恥ずかしい」感情を抱いている。
梨枝は少しでも逞しくなるため、関西務めの兄の実家返りを機に、母の下を離れて一人暮らしを始める。

母の反対を押し切って一人暮らしを始めた梨枝は、「かわいそうな母」と初めて距離を置くことで、自分は母が嫌いだったのではないかと考える。

「かわいそうな母」紀子は、梨枝が小さい頃に子供を一人亡くした。
それが発端となり離婚。影を持つ「かわいそうな人」となる。
梨枝は母を可哀そうな人としつつ、自分にも母の呪縛による影を感じている。

梨枝は、兄の嫁の雪ちゃんや、自分の恋人の三葉には影がないと信じ込んでいる。
しかし実際には、彼ら彼女らにも影があることに気が付く。

感想

不気味さについて

赤い花の不気味さが際立つ。
綺麗すぎるものを恐ろしく感じるのは日本人の国民性なのかもしれません。
梶井基次郎の「桜の樹の下には」もそんな話でした。
死体が埋まっていないなら、桜がこんなに美しいはずがない。
そのように感じる、粘り気を持った不気味さと、本書の閉塞感からくる不気味さは非常に似て感じます。

そうか、これが現代文学か。

結末について

本書の結末は全部が上手くいく。
少なくとも主人公に限って言えば全てが上手くいく結末です。

流石にバファリン女まで、改心するのは都合がよすぎやしないか?
などと、ちょっと言いたくなってしまいました。

読み終わったときに感じた気分は、
整備されて、道幅もそれなりにあるけれど、薄暗くて不気味なトンネルと歩ききって、外は少し肌寒いけれど、意外にもいい天気。
そんな感じでした。

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