【あこがれ】

あこがれ 川上未映子 著

動機

新潮文庫の100冊 2018年版を読む。
3冊目

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すすめる?

読み始めは耐えてください。
「ミス・アイスサンドイッチ」の語り部の「ぼく」は小学4年生ですが、文章力は小学2年生くらいです。
しかし「ぼく」も成長します。途中からは読める文章になります。

「苺ジャムから苺をひけば」のヘガティーも同じです。小学6年生にしては幼く感じるところがあります。

悪く言えば幼すぎる。よく言えば純粋すぎる。
きっと多くの方が、自分の小学生時代と比較してそう感じるのではないでしょうか?

でも誰だって、過去は美化したいのです。
おじさま方が、決して美しくない自分の高校時代を、高校球児に重ねることで美化するように…

この辺りさえ受け入れてしまえれば、純粋すぎる小学生の彼ら、彼女らを通して、こんな風に世界を見られたらな~ と思えます。
私は好きです。

内容

ミス・アイスサンドイッチ

小学4年生の「ぼく」は、卵サンドの売り手の「ミス・アイスサンドイッチ」を好ましく思っている。「ぼく」は、特に彼女の目が好きで、彼女の絵をかいたりしていた。

しかし、同級生の女の子たちがしていた「ミス・アイスサンドイッチ」の顔についてのうわさ話をきっかけとして、「ぼく」は毎日のように通っていた「ミス・アイスサンドイッチ」に会いに行くことを止めてしまう。

「会いたいときに、会いたい人がいてさ、会えるんだったら、ぜってい会っておいたほうがいいと思うんだよね」
同級生の女の子に、そう説得された「ぼく」は、綺麗に書き上げた「ミス・アイスサンドイッチ」の絵を携えて彼女に会いに行く。

苺ジャムから苺をひけば

小学6年生のヘガティーは、父に再婚前にも娘がいたことを偶然知ってしまう。
知ってしまったが最後、自分の父親を今までの父と別の人のように感じてしまう。
父に自分の知らない面があることを知ったヘガティーは戸惑い、同級生の麦くんに相談する。

この感情に蹴りをつけるには、その娘に会うことが必要だ。そう考えをまとめたヘガティーは、父の携帯電話の電話帳を盗み見て、自分の姉に会う計画を立てる。

感想

小学生の頃は特に、女の子の方が男の子よりも口が達者で、自分の意見を通せることが多いですよね。
そして、口の下手な男の子は自分の主張が通らないことに腹を立て乱暴してしまうと…

だけど、男の子だって何も考えていないわけではないのです。言葉にできないだけで胸中では意外にも物を考えています。

「ミス・アイスサンドイッチ」のぼく、麦彦くんも考えています。

麦彦くんは図画の時間、風景画を描いている理由を、友達のヘガティーに聞かれます。
「たぶん、きれいだったからだよ」そう答えたけれど、よくよく考えてみると違う気がする。
頭で考えたことをもっと言うべきだったんだ。でも、もう言う機会はないだろう。

麦彦くんは純粋で、だからこんな小さなことを気にしてしまう。だけど本当にそれは小さなことだろうか?

「苺ジャムから苺をひけば」は6年生になったヘガティーの物語です。
自分の父親は、再婚前にも娘がいた。この世に自分の知らなかった姉がいる。
いまだ経験のない一大事に、ヘガティーが相談した相手は麦くん。

ヘガティーもなかなかに見る目がある。
伝えにくいけれど、「麦彦君」ではなく、「麦彦くん」と言う感じの少年です。

自分もたまには、麦彦くんの速度で物を考える。

最後に少しだけ映画の話。
作中で、「コラテラル」と言う映画の話が出て来ます。
トム・クルーズが悪役を演じたことで話題になったそうです。

冷静沈着、凄腕の殺し屋を演じるトム・クルーズ。
しかし全然、暗殺者に見えない。

ヘガティーはトム・クルーズについてこう言っています。

「たぶん、あの人が画面に出てくるとね、何も言わなくっても、何もしなくっても、『あっ、いまから何かが始まる』って、そういう気持ちにさせてくれるんじゃないかな。」

まさにその通り。トム・クルーズは華があって格好いい。
格好良すぎて、目立たないはずの暗殺者が目立ちすぎる。
でも、そこがいいんだよなぁ。

その華が「アウトロー」では捜査官のタフさに繋がっていて素晴らしい。

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